サンダーバード6号

plagio2005-01-25


映画としては残念ながらあんまし面白くなかった(パペット使いのテクニックはものすごくいいのだが)。展開がスリリングではない。スパイがスカイシップを乗っ取りペネロープ(姫)に盗聴器を仕掛け、そのテープをコラージュして嘘の指令を出し云々、という展開はなかなかアナクロでぐっときたのものの、その後のあっけなさとかはガッカリですぜ。

しかしガジェット類はやっぱりイカす。ペネロープが乗るロールスロイスの6輪車“FAB1”が大英帝国らしく優雅で且つ茶目っ気もあり(トランクからはみだす荷物)お間抜けでかっこイイのだ*1

http://response.jp/issue/2004/0708/article61931_1.images/68866.html
※1966年の劇場映画版実際に使われたコレが昨年オークションにかけられていたらしい。

ただ、文化史的な視点だといろいろ興味深いもんがある。
公開当時の1968年といえば米ソのアポロ、ソユーズのロケット打ち上げ合戦真っ最中だ。英国民も当然、宇宙時代の到来に浮き足立っていたと思われるが、大英帝国抜きのこの合戦に、辛酸舐めながらひねくれ気味にこの様子を見ていたんだろう。その負のエネルギーの結果が「サンダーバード」であったり「007シリーズ」だったりするんじゃないか(だからこれらのシリーズは面白いんだけど)。ま、そんなことはよく指摘されうることなんだけど、この映画を観てそれに加え、地に落ちかけのこの時点での大英帝国の次の手を垣間見た気がした。
それは「オリエンタリズム」への渇望。
この映画では、竣工したスカイシップのテスト飛行で世界一周旅行をするという設定なのだが(なんとも優雅だぁ)、当然世界各国のシーンが出てくるわけです。NY、グランドキャニオン、ブラジル、インド、エジプト、スイスなど。話は飛ぶが、宇宙競争で負けた英国はかつての商法で一発逆転で返り咲こうという思想が国民の根底にあったのではないかと穿ってみてみる。
まぁ、なにも調べずに適当なこと書いてるんで完全な与太であるが、
ちなみに、レイモン・ペイネはこれを見て『ペイネ 愛の世界旅行』(1974)のアイデアを思いついたのでは??と思った。これは制作に4年かけてるしタイミングとしてはどんぴしゃ。根底は「ビジネス(貿易)」と「愛」という大きな違いはあるにせよ。

PS.ぺネロープ姫の吹き替えが黒柳徹子なのはかなり違和感があるぜよ。

サンダーバード6号 [DVD]

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【追記】
あ、誤解がないように言うと、例えば音楽の例えで言うと当時のアメリカのサバービアのバチェラーたちはスペースミュージックもオリエンタルミュージックも同等の「辺境の神秘」的なモノのとして聞いていたであろうことに対して、英国人はアウタースペースに対する興味はあるものの、(宇宙競争に負けた)ある種のコンプレックスにより、オリエンタルミュージックに対しては威圧的な感情を伴って扱っていたのでは?このスタンスの違いが英米であるのでは?そうだとすると英米で出来てくるモノ、作品の面白さの質(どっちが上とかじゃなくて)も、当然違うものになってくるよね?と、こういったことが言いたかったのです。あくまでも例え話として。ちなみに全く根拠ないです。

*1:積雪地帯ではボディ下からソリが出てきて30度程度急斜面も走行可能。動力源はよくわからない。