GERRY ジェリー
ガス・ヴァン・サントの2003年カンヌパルム・ドールを獲った『エレファント』の前作、『ジェリー』をシネマライズXで見てきた。
土曜は『オールド・ボーイ』や『血と骨』など韓国映画、韓国モノ*1の大作公開が目白押しなため、いくらパルムドール作家とはいえ、こんな宣伝もほとんどしてない地味で退屈な映画をストレートに誘っても誰も一緒に見てくれないことはOLにもてないおいらでも察しがつくため、「ねぇねぇ♪トム&ジェリーの映画見に行かない?」と婦女子を誘ったところ、余計レスポンスがなしのつぶて状態だったため、しょうがなく一人で行ってきたのである。
で、シネマライズXって初めてなんだけど、30席ぐらいの(しかもこの大きさで地形上、1F席、2F席と分かれている)こんなに小さいところなんだーとびっくりした。土曜の16:00の回で客は15人といったところ。逆にこんな小さなところならば(企画すれば)未公開の見たい馬鹿映画ガンガンやってくれるかも、という淡い期待を持てるのであった。
さて『ジェリー』であるが、ホームページで『エレファント』の原点とか言われてるぐらいの情報しか敢えてもたずに行ってきた。まぁガス本人が
と語ってることもあり、相当退屈でやさぐれたどうしようもない映画であることは目に見えている。ガスの力量を鑑みても。
「アンドレイ・タルコフスキー、アレクサンドル・ソクーロフ、ファスビンダー、デレク・ジャーマン、タル・ベーラ、そしてアッバス・キアロスタミとジャック・タチ。彼らは観客に考えさせる。我々は魔法にかけられてしまうんだ。私は、こういったやり方で仕事をしたいという欲求にとらわれていたんだよ」
さて、ストーリー。
男2人で車を降りて散歩してたら、帰り道に迷ってしまいエライことになってしまいました。以上。
超長回しだし、冗長だし、フツーに退屈極まりない(やっぱり前半寝ました)映画でした。ただ後半の映像はホントに美しいです。
で、独断と偏見で個人的な主観を書きます。かなり妄想入ってるのでよく聞きやがれ!いや聞いてください。
コレは『エレファント』の文脈で語るべきでなく、自作『マイ・プライーベート・アイダホ』の自己言及およびこれに対するアンサーという文脈で語られるべき映画だと。
つーのかもっとわかりやすく言えば、デヴィッド・ボウイにおける『Space Oddity』と『Ashes To Ashes』に呼応する関係*2だと。『Space Oddity』=『マイ・プライーベート・アイダホ』、『Ashes To Ashes』=『ジェリー』だね。
ジェリーでも野郎2人で野宿の焚き火のシーンが出てきてあっ、と思うのですが、そのシーンでマット・デイモンの開口一番の台詞が「I hate you」。ネタバレになるので詳しくは書きませんが相方の最期のシーンでも、マット・デイモンの行動は『マイ〜』の真逆。
まるで『マイ〜』は、ラリったアート思考の勘違いゲイ野郎=「自分」、が妄想で作った映画でした、と言わんばかりの勢いなのです。
でも、そこはしたたかで音楽マニアのガスさん。『Space Oddity』と『Ashes To Ashes』ではどっちが多くのヒト心を捉えてるか先刻承知。『ジェリー』も単にアート嗜好に走るんではなくて、そういうユーモアと自虐を兼ね備え、『カウガール・ブルース』で地に落ち、『グッド・ウィル・ハンティング』なんかの糞つまらない映画でたまたま得た名声と金をもう一度!とばかり、せっせと次に繋げる姿が目に浮かびます。天晴れ。応援するぜ!次は絶対コメディつくるって。このヒト。断言します。